Aさんは、徐々に医療的配慮が必要となり、R6年6月26日泰山寮を退所し、グループホーム(GH)という新たな生活の場へお引越しをされました。
泰山寮に入所され28年間、仲間との生活を楽しまれていました。山登りや宿泊外出などのたくさんの思い出を抱え、新しい生活の場へ向かいました。
「本当に泰山寮を出て大丈夫?」「住み慣れた生活ではなくなるのでは?」支援員として様々な葛藤がありました。私たち(地域移行委員会)ができる事って…それは、Aさんが安心して楽しく暮らせる環境を探すことでした。Aさんがどんな環境がお好きなのか、どんな口癖があって、どんな時にニッコリ笑顔になられるのか、はたまた怒ってしまうのか…そんなAさんを思い浮かべながら、「生活と暮らし」に焦点を当てGH見学を重ねてきました。しかし、さまざまなGHの見学の中で見えてきたもの…それは当たり前ではありますが「人対人」であることでした。ここに拘らなければ、Aさんを安心して送り出すことができないと思い、ご本人との相性もですが、これから連携していくであろう事業所の管理者、サービス管理責任者の考えや思いなどをたくさん聞かせてもらいました。
しかし、なかなかマッチングするところが見つからないという現実の壁にぶち当たりました。それでも何かないかと相談員から情報を得たり、地域の福祉仲間に聞いてみたりしましたが、たまたま裏紙の山から見つけ出した1枚のファックス用紙…これがAさんの人生のパートナーとなるGHでした。
Aさんと一緒にGH見学に行った時のことは、今でも忘れません。県外に住んでいる妹さんも来てくれました。「ここがお部屋ですよ。」と個室に入った途端、Aさんの表情が変わり、ニッコリ笑顔。椅子に座ったAさんとGHの看護師さんとは初対面でしたが、話が盛り上がること!!
そして、Aさんに聞いてみました。
「泰山寮とここ(GH)はどちらがいいですか?」⇒「ここ。」
いやいや、言わせたかもしれないから、念のためもう一度聞きます。
「ここ(GH)と泰山ではどっちに住みたいですか?」
同じお答えでした。一緒に来ていた近藤寮長も苦笑いです。
泰山寮職員として安堵したと同時に少々複雑な気持ちになりながら、妹さん、GH管理者と大笑いしたことを思い出します。
その後、期間を空け2度に渡りAさんの意思確認をさせていただきましたが、Aさんのお気持ちは変わることはありませんでした。
いよいよAさんの引っ越しの日が近づくと、泰山寮のたくさんの職員がAさんに会いに来てくれました。これまでAさんは6月に体調を崩しやすかったのですが、この6月は体調を崩すことはほとんどなく、Aさんの引っ越しへの意気込みが感じられました。
引っ越しの日、Aさんの所属棟であるCD棟の職員から泰山寮思い出のアルバムを贈呈され、みんなで記念写真を撮りました。
鈴木課長の運転でGHへ向かいました。「○○ちゃん(妹)に会いたかったのぉ。」「行きたかったのぉ。」と車中では普段以上にお話しされていました。
GHへ着くと妹さんとGH職員が迎えてくれました。
この後、Aさんに最後に尋ねました。
「泰山寮でなく、ここ(GH)に住みますよ。Aさん、いいですか?」
「たいざんイヤなのー!!」と大きな声で答えてくださいました。
これだけはっきりと意思表示を示してくださったAさん、もう職員は驚きません。そして、よろしくお願いします、Aさん有難う…という気持ちでいっぱいでした。
また、7月になったらAさんに会いに行きます!さて、Aさんに「会いたかったのぉ。」と言ってもらえるでしょうか?
楽しみです!